ある日、思いついた。
思いたいたよ。
人間の両腕を切り落とせば良いんだ。
人は人に危害を加える時、必ず何処を使う?
正解はね、手だよ。
人を殴るのも、人を切るのも、人を撃つのも。
そしてその道具を作るのも。
みんなみんな。
君にもついてるその両手。
手があるから危ない物が生まれちゃう。
手があるから危ない事で傷をつける。
手なんてあるから不幸になるの。
だったら。
手を切り落としちゃえば良いよね。
でも、それだけじゃダメなんだ。
人は手を失くしたら今度は腕を使って物を使うように、生むようになるよね。
だからさ。
腕から切り落としちゃおうよ。
ちょっと不便?
でも大丈夫。
その内慣れるよ。
あれ、でも…。
腕がないのに馴れちゃったら、今度は腕が失くても使える凶器を生み出しちゃうんじゃないかな?
人は賢い。
それ故に。
過ちをわざわざ繰り返す。
賢い筈なのに。
いつまでも学習しない、お馬鹿さん。
手を切ってもダメ、腕もダメ。
ならさ。
今度は脚を切る?
ダメだよ。
きっとそれでも繰り返す。
人はどんな状態でも争いを止められない生き物だから。
それは本能?
だったら、どうすれば良いの?
人が居るからケガしちゃうなら。
人を滅ぼしちゃえば良いのかな?
ダメだよ。
人はとっても大切なんだから。
大切な大事な天然物。
生まれた経緯は奇跡の刹那。
そんな存在、失くすのはもったいない。
だからね。
私考えたの。
脳だけにしちゃうの。
これなら人の記憶はそのままに。
でも人が人を傷つけることは出来なくなるよ。
でも、それじゃみんな退屈だよ。
可哀想だよ。
何か方法はないかな?
大丈夫。
みんなには長ーい夢を見てもらおう。
その世界は今にそっくり。
みんな自由に変わらず、生きられる。
これなら退屈しないよ。
私達も含めてね。
いっぱい並んだ水槽に浮かぶ脳。
とっても綺麗だろうなぁ。
そうだ。
折角だから、飾り付けしちゃおうよ。
とっても良い考え。
イルミネーション、デコレーション。
カラフルいっぱい。
可愛いも、カッコいいも作れちゃう。
脳だけになった人間は。
誰が誰だかわからない。
どうしてかな?
それはきっと、脳はみんな同じ形だから。
色も形もほとんど変わらない。
そうだ、そうなんだ。
みんな皮を剥いで、肉を削いでしまえば同じ。
あぁ、人ってこんなにみんなそっくりだったんだ。
今までなんであんなに争っていたんだろう。
みんな一緒、嬉しいな。
やっぱり、手や腕、体があるから傷がつくんだね。
差ができちゃうから。
使えるから。
やっぱり人は不思議。
なんでこんなにも不幸で出来てるの?
やっぱり、脳だけにしたのは大正解。
これで、争いはなくなるね。
これで、平和になっちゃった。
いっちょ解決。
…。
あれれ?
おかしいなぁ。
あっ、そっか。
やっぱりダメかぁ…。
夢の中で暮らす人間は、肉を削ぐ前となんら変わらず生活してる。
笑って、泣いて、怒って。
傷つけていた。
差別が起こって、拳が飛んで、引き金を引く…。
夢の中でも不幸になっちやった。
また繰り返す。
いつまでも繰り返す。
何が何でも繰り返す。
人って不思議。
不思議な生き物。
とっても不思議なお馬鹿さん。
人は賢い?