「何を見ているの?」
「…」
「ねぇ」
「聞いてる?」
「私がもし、恋をしたと言ったらどう思う?」
「え?」
「私が恋をしたら」
「…したの?」
「私は、恋をしたの」
「そう…」
「最近は毎日あの娘を、この窓から見ているの」
「そうなんだー」
「一体どんな人なのか、ワタシ気になるなー!」
「…あの娘よ」
「どれどれー…」
「ほうほう」
「好きになった子は、女の子だったのね」
「軽蔑した?」
「ううん、全然」
「同性だろうがなんだろうが、好きである事に偽りはないからね」
「ありがと」
「そう言ってもらえると、嬉しいわ」
「そんなことよりも、ワタシは貴女が他者を好きになる事が意外だったな」
「人になんて興味ない生物かと思ってた」
「私も初めて、恋をしたから驚いている」
「でも、子供に優しそうな良いお姉さんじゃん!」
「そっちじゃない」
「えっ?」
「私が好きになったのはあのお姉さんの側にいる小さい方よ」
「あぁ、こっちかー」
「どう?」
「貴女から見て、どう?」
「うん、とっても可愛いと思う!」
「そうよね!」
「どんな娘かは知ってるの?」
「…知らないわ」
「喋った事すらない」
「なんで?」
「あんな小さな少女に近づいたら、周りに悪い印象を与える」
「あの娘を手に入れるのは至難の技よ」
「そっかー…」
「でもね」
「?」
「それでも、私はいつもこの窓から見ているの」
「あの娘の笑顔と、靡く髪」
「…あぁ」
「美しい…」
「なんだか、切ないね」
「えぇ、そうなのよ」
「あぁ、何がかんでもあの娘が欲しい…」
「手に入れたい…」
あの娘を、私の物にしたい。
「…」
「私ね、人形を買った事ないの」
「人形遊びに昔から憧れるのだけど、中々良い物が無くてね…」
「でもさ、確か貴女って人形苦手じゃなかったっけ?」
「無機物の物を人に似せてるのがー…みたいな事言ってたよね?」
「それも買えない理由にあるわね」
「だから、余計欲しい」
「だって、想像してみて…」
「?」
「あの肉の温かみを、匂いを、感触を感じながら、私の思うオシャレな姿に模様替えするの…」
「オシャレな人形が出来たら、きっと愛着の沸いたあの娘をギュッと抱き締めてあげるの」
「あの綺麗な髪を、結ってあげる」
「ステキ」
「随分あの娘にお熱なんだねぇ」
「自分自身でもう一つの現実を創る位だもん」
「ご、ごめん」
「少し熱く語り過ぎたわ///」
「良いってことよ!」
「それに…」
「? 」
「今貴女の顔、とっても良い笑顔だよ!」
「!」
「いつもの仏頂面が想像出来ないくらい」
「フフッ、私もそんな表情が出来るのね」
「あはは」
「さてさて、それじゃ」
「そろそろ行こうか!」
「そうね、急がないと日が暮れるわ」
「入れるのってこの袋で良いの?」
「馬鹿、それゴミ袋じゃない…」
「そんな物に入れたら可哀想でしょ?」
「えー、でも丁度良い大きさだよ?」
「駄目な物はダメよ」
「というより、普通に持って帰るだけよ?」
「じゃあ、こっちの綺麗な袋は何に使うの?」
「それは、あの娘と遊んだ後に使うやつ」
「何に使うの?」
「昔からコレクションに埃が付くの嫌なのよ」
「だから、遊んだ後はそれに入れて保管しておくの」
「ほぇー、相変わらず拘りがあるんだ」
「神経質なのよね、私…」
「まぁ、そうかもね」
「でも、そんなに大切にされるんだから、きっと喜ぶよ!」
「そうだと良いな」
「さっ、早く行こ!」
「えぇ、そうね」
「行きましょうか」
「ねぇ、お嬢ちゃん」
「私ね…」
アナタニコイヲシチャッタノ。